2007年2月27日火曜日

日本リンパマッサージ協会オールトBB 

オールトBB株式会社

リンファティックテラピFC加盟店募集

抗体の多様性((GOD:Generation of Diversity (多様性発現)のミステリー)) 

         (神の秘密)と名付けられた免疫学上の最大のジレンマ 

  わたしたち高等動物は、目には見えませんが、細菌・ウィルス・カビといった病原体にかこまれて生きています。ちょっと病気になっても、しばらく静養したり薬を飲んでいると元気を取り戻すのは、体に免疫系という生体防御機構があることが大きな理由です。 

この生体防御機構の免疫系で重要な役割をはたしているのが、抗体という一連のたんぱく質です。抗体は、白血球の一種であるB細胞(Bリンパ球)がつくります。抗体はたんぱく質ですから、アミノ酸が鎖状につながってできているのですが、立体構造は線状ではなく、いろいろな形で「たたみ込み」が起こって、Y字型の立体構造をとっています。

この構造をこまか調べていくと、微細構造が非常に違っており、多種多様なのです。そのY字の腕の先のところで多様性が高くなっています。これは、いったい何を意味しているのか。じつは抗体の重要な機能は、外から入ってきた病原菌とか、病原菌がつくる分子を認識して、そこに結合することなのです。体の外から入ってくるものを抗原と呼んでいますが、抗原と抗体がまずがっちりと反応することが抗原を体から排除するための重要な第一ステップです。

抗原と抗体はいわば鍵と鍵穴の関係なっていて、鍵つまり抗原の種類が非常に多いと、鍵穴つまり抗体のほうも多くのものをそろえておく必要があるのです。抗体の分子をX線で調べると、腕の先の可変部分の多様な微細構造部分に抗原が結合することがわかります。 

では、いったい抗原にはどのくらい種類があるのでしょうか。つまり、わたしたちが病原体にかこまれながら生きていくには、いったいどのくらいの種類の抗体をつくる用意をしておかなければいけないのか。様々な実験と推察から、少なくとも100億種類の抗体をつくらなければいけないのに、人間の体を構成している細胞には、どの細胞をとっても、3万個の遺伝子しかありません。

 この3万個の遺伝子をすべて抗体用に使うわけにはいけません。いろいろな酵素や細胞を構成しているタンパク質を作らなければなりません。100億と3万、これでは明らかに数の上でつじつまが合いません。最大数万種類の遺伝子から100億種類の抗体がなぜつくれるのか。これが、免疫学者のメルビン・コーンが「GOD」(神の秘密)と名付けた免疫学上の最大のジレンマだったのです。 

このジレンマを解いたのが、日本のノベル学者の利根川 進博士の研究です。 みなさんは、ダーウィンの進化論のことを聞いたことがあると思います。ダーウィンは、約36億年前に地球上で生命が誕生してから、その後DNA型の生物が発生して、このDNAが組替えという現象と突然変異という現象にもとづいて、長い期間に変異株をつくって、その変異株のなかからそれぞれの地域の環境にもっとも適合した変異株が生き残り、はびこってきた、そうすることによって「進化」という現象がおこった、という理論を提唱しました。

 遺伝子のランダムな多様性と環境による変異株の選択、これがダーウィンの進化論の二大原理、進化論のエッセンスです。ダーウィンの進化論をここでもちだしたのは、これと同じ原理が、免疫のGODのミステリーに潜んでいることがわかたからです。

 ダーウィンの進化論と免疫系のGODのミステリーの原理とでは、ひとつ決定的な大きな違いがあります。それは時間のスケール(物差し)です。 遺伝子は安定なものです。そうでないと、子が親に似る遺伝という現象はおこりえません。安定になるようにいろいろなメカニズムが備わっているのです。しかし逆にまったく変わらないというものであれば、ダーウィンの進化論は成り立ちません。

 遺伝子はひじょうに遅い速度で、何百年、何千人という長い時間をかけて少しずつ異変していくのです。それに対して免疫系の場合は、一世代、一固体の免疫系の中でしかも抗体遺伝子に限って、ものすごい速度で、親から受け継いだ限られた数の遺伝子に、異変が入っていくのです。

 しかも、ダーウィン進化論のもうひとつの原理である、環境による特異的な選択も、免疫系の中で起こっています。このメカニズムのおかげで、わたしたちは親から受け継いだ1000個程度の抗体遺伝子、つまり遺伝子全体が三万個あるとすれば3%になりますが、3%程度の遺伝子を使って、これを急速に変化させることによって、100億以上の抗原に対処していることがわかったのです。 

 Bリンパ球は、幹細胞という細胞が増殖してできてくるもですが、増殖の過程でいわゆるDNAの組替えという現象を使って、それぞれのBリンパ球が、ちがう抗体遺伝子を発現します。ここですでにかなりの多様性が出るようになっています。そこえ抗原が攻めてくると、鍵と鍵穴の関係で、抗原の構造にぴったりと合う抗体を表面にくっつけているBリンパ球のみが、選択的に増殖してきます。

 ほかの細胞は増殖しません。つまり、抗原を環境とみなして、環境に選ばせるのです。これが第一段階の異変と選択です。 免疫系は二段構えで変異と選択をおこなっています。もうひとつの変異と選択は、次のようです。

 いったん抗原が決まると、つぎに高速な突然変異が入るメカニズムが活性化されます。その結果、さらにいろいろな変異株ができてきて、前よりもさらに構造がピタリとよくあう抗体を産生(生産と同じ。特に抗体やホルモンなどの高分子物質の生合成について使われる言葉)するBリンパ球のみが、また抗原による選択で特異的に増殖してくるのです。 

このような二段階の過程を経て、外から入ってきた病原体、あるいはそれがもつ抗原を徹底的に取り除いてしまうのです。 まさに、ダーウィンによる生物進化のプロセスと同じ戦術を、免疫系が使っているのです。それゆえ、この免疫系のことをDarwinian Microcosmos(ダーウィンの小宇宙)と呼ぶことがあります。

 つまり、免疫系の中で、ダーウィン的な進化がおこっているとういことになります。  この研究の成果の大事なところは、GODのミステリーを解いたということです。それに加えて、生命科学全般にインパクトを与える、別の一面がありました。つまり、遺伝子は進化の長い過程においてのみしか変わらない、というのが生命科学の常識だったのです。

 それに対して、免疫系の抗体遺伝子についてはそのドグマ(独断的な説)が当てはまらない、ということが明らかになったわけです。 つまり、この研究の成果は、これまでの生命科学の常識をくつがえす発見になったのです。

Reported by Peter McCallum

0 件のコメント: